【手記】長井秀夫 道子

2008年9月26日

 いろいろな思いに揺れ動き、苦しみ、涙を流した、そんなことには関係なく月日は流れました。そして一周忌を迎えることになりました。
 やさしさのある、おだやかな息子でした。しかし想像がつかない程きびしい世界に身を置き、あの様なことになりました。本人にとっては止むにやまれぬ思いがあり、信じる道があって、それを熱い思いで走り抜けていったのだと思います。
 今となっては、「よくやったよ健ちゃん、ゆっくり休みなさい。」と云ってやりたい思いです。
 ミャンマー政府に対しては、はげしい怒りを覚えます。強く抗議をしたい、一日もはやく遺品を返しなさいと。
 多くの方からの慰め、はげましのお便り、心より感謝致しております。ボランティアの方々、そして多くの方々、大変お世話になりました。心からお礼を申し上げます。
 元気を出して生きてゆきます。
                                                      長井 秀夫
                                                          道子

【手記】APF通信社代表 山路徹

2008年9月26日

 あの日から一年が経ちました。私は未だに長井さんの死を受け入れられないでいます。どう受け止めたらいいのかが分からないのです。なぜ、長井さんは射殺されたのか?その時、現場では一体何が起きていたのか?長井さんが握りしめていたビデオカメラは今どこにあるのか?長井さんが最後に撮影した映像は何を捉えていたのか?そして何を伝えたかったのか? そうした疑問や謎のひとつひとつが解明されなくては、この事件を乗り越え、前に進むことが出来ないのだと思います。
 私たちはこれまで外務省を通じてミャンマー軍事政権に対し、カメラとビデオテープの返却や事件の真相解明を求めてきました。しかし、事件に対するミャンマー軍事政権の主張は、「長井さんは流れ弾に当たった。至近距離からの狙い撃ちではない」とか、「長井さんが倒れる様子が映っているビデオはCGで捏造されたものだ」等々、まったく話になりません。日本警察の科学捜査によって、至近距離からの発砲は間違いありません。また、長井さんが倒れる様子が映っているビデオは数種類あり、CGで作った等あり得ないのです。
 警視庁組織犯罪対策課の皆さんには今日まで事件解明のために大変な努力をして頂きました。「現場に行けない」という国境の壁を乗り越え、長井さんを射殺した兵士の所属部隊の割り出しや、銃の特定、至近距離から射殺されたことの科学的な証明など、最大限の結果を出していただいたと、大変感謝しています。
 問題は外務省です。これまで私たちには何の説明もありませんし、努力の様子もまったく伝わってこないのです。こんな話があります。警察が事件現場の住所を外務省に照会したところ、調べられないというのです。ミャンマーは日本と外交が無い国ではありません。むしろこれまで日本が巨額の経済援助をしてきた国です。何のための援助だったのでしょうか?日本は住所も調べられないような国に対し援助していたのでしょうか?住所も調べられない外務省が、どうして事件を解明することが出来るのでしょうか?私の問に、外務省の担当者は「それを言われてしまったら何も言えません」と言葉を詰まらせていました。これが私たちの国、日本の外務省なのかと思うと、大変ショックでした。
 警察の努力や国民の血税を無駄にしないためにも、そして何より、長井さんやご遺族の無念を晴らすためにも日本外務省には毅然とした態度でミャンマー軍事政権に対し事件の真相解明を迫ることを強く求めます。
 最後になりましたが、事件発生から今日まで署名活動を通して尽力頂いたボランティアの皆さんに心より感謝申し上げます。10万人以上の署名が集まったことに、私どもは大変勇気づけられました。皆さんの気持ちに応えられるよう今後も精一杯力を尽くしてゆきますので、どうか宜しくお願い申し上げます。
                                              APF通信社代表 山路徹

【速報】ビルマ軍事政権、政治囚らに恩赦

2008年9月24日

以下、時事通信より転載
(転載)
19年収監のジャーナリスト釈放=ミャンマー軍政、計9000人に恩赦
【バンコク23日時事】
 ミャンマー軍事政権は23日、旧首都ヤンゴンの刑務所に19年以上収監されていた著名ジャーナリスト、ウィン・ティン氏(79)を釈放した。収監期間は同国の政治犯の中で最も長かった。同氏は「(軍政主導で起草された)憲法を受け入れることはできない。軍政を終わらせるため、政治活動を続ける」と述べた。
 同氏は自宅軟禁中の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんが率いる国民民主連盟(NLD)の創設メンバー。1989年7月、「スー・チーさんに協力して戒厳令下で不服従キャンペーンを行った」との理由で実刑判決を受け、その後、刑務所内の人権侵害を国連に通報しようとしたなどとして刑期が2回延長された。
2008/09/23-20:57
(転載終了)
(参考URL)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2008092300288

在日ビルマ人恐喝未遂容疑で逮捕について

2008年9月23日

きのう、在日ビルマ人の男が弊社スタッフに対する恐喝未遂容疑で警視庁に逮捕されました
男は今年1月、弊社スタッフに対し、長井健司記者が銃撃された際に握りしめていた、
未だ返還されていないビデオカメラとテープについて、「カメラとテープが欲しければ金を寄こせ」
などと持ちかけ、弊社が信用できないと判断し断ると、「ただじゃおかない」などと脅してきたのです
長井記者の事件を悪用し、金銭を要求するなど言語道断、極めて遺憾で強い憤りを禁じえません
当社は、今後もこのような事案が発生した場合は断固とした措置をとってゆく所存です
追記:
日本におられるビルマ人の多くは善良な人々です
私たちは祖国の民主化を願う皆さんを応援しています
2008/9/23 APF広報

【9月22日】長井健司記者 関連記事

2008年9月23日

長井さんの遺族が墓参り 「1年早かった」
 ミャンマーで2007年9月27日、反政府デモ取材中に射殺された映像ジャーナリスト長井健司さん=当時(50)=の1周忌を前に、長井さんの母道子さん(76)と妹の小川典子さん(48)が22日、愛媛県今治市で墓参りをした。
 道子さんはこの1年を「空白感や悔しさで気持ちは揺れ動いたが、早かった」と振り返った。
 週に2、3回墓参りをするという2人。墓碑の横には長井さんの顔写真が入った石碑と、愛用していたビデオカメラをかたどった石碑が置かれている。道子さんは「顔をふくと、にこっと笑って健司がここにいるような気がする」と話した。
 ビデオカメラなどの遺品が返却されていないことについて、2人は「絶対に返してほしいとミャンマー政府に言い続ける」と力強く話した。
2008/09/22 16:36 共同通信
http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008092201000527.html